町内会今昔

2004年06月19日

category= books

『町内会今昔』(さっぽろ文庫70)札幌市教育委員会 1994
町内会って何なのか、このところ気になって勉強してます。いろんな本がありますが、これお勧めです。

町内会って、GHQが廃止しようとしたことで分かるように、欧米型の近代主義、民主主義の路線とは矛盾するものです(中川剛『町内会−日本人の自治感覚』(中公新書591) 1980など参照)。そういう理論的・イデオロギー的な部分も面白いんだけど、この『町内会今昔』は、ひとつの都市について近隣団体の変遷を具体的にたどった本として貴重です。明治から1990年代までの通時的なドキュメント。資料も豊富だし、町内会を運営してきた人たちの証言集もある。
もうひとつのポイントは、札幌が開拓都市(内国植民都市)だということ。室町時代からと言われる京都の「町組」のように、自治的住民組織の厚い伝統をもつ都市に対して、北海道の多くの都市は近代以降の建設都市です。そういうところで住民組織はどうつくられてきたのか。この問題は横浜や神戸だって同じだし、東京だって実は共通の問題を抱えて出発した。さらに、近代というのは全国の主要都市のまわりに新しい住宅地をつくり出した時代ですから、ある意味で“開拓都市”というのはそこらへんにごろごろ転がっているわけです。さらに、台湾、朝鮮みたいな植民地の都市で日本人はどうやって共同生活をし、またその仕組みをどのように現地の台湾人や朝鮮人の社会にも浸透させようとしたのか、といった問題にもつながっていきます。
「さっぽろ文庫」全100巻は粒ぞろい。電子配本の試みも。自治体にとって“読まれるアーカイブ”があることは本当に素晴らしいと思います。

ところで、この本の中に戦時中の町内会が公園をせっせと耕して畑にしている写真が出ています。先日、授業で 吉田太郎『200万都市が有機野菜で自給できるわけ—都市農業大国キューバ・リポート』築地書館 2002 を紹介してくれた人がいましたけど、とてもよく似ています。キューバの場合、モノカルチャー(砂糖しかつくってなかった)の背景があって、冷戦時代は共産圏の国際分業のなかで、ソ連の援助も受けたりして食っていたんだけど、そのソ連が崩壊して何も食えなくなっちゃった。それで、都市内の空地や駐車場をみんな農地に変えて、半ば結果的にグローバリズムに抵抗しうる自給的な都市農業を成立させてしまった、というシナリオです。余談でした。

投稿者 aoao